スパイダーマンをしまってもらっていいですか?
少し前の出来事。
隣に座った同僚から、会議中にいきなり言われた言葉。
僕のノートの表紙にスパイダーマンのシールが貼ってあり、それをしまってくれと言っているのだ。
その時は理由がわかりませんでしたが、すぐに隠しました。
会議が終わり、その彼が驚いたことに、「すいませんでした」と言ってきたのである。
「実は僕、クモ恐怖症なんです」
クモ恐怖症とは、
クモ恐怖症(クモきょうふしょう)とは単一恐怖であり、クモに対する異常な恐怖感を抱くことを指す。学術的には英名であるアラクノフォビア(Arachnophobia)と呼ばれる事が多い。正式な診断名ではない。
多くの場合、クモ恐怖症を持つ人のクモに対する反応は他人には理解しがたい。
ちなみに、いろいろな恐怖症が世の中にあるが、恐怖症の中で最も強い部類の恐怖症なのだそうだ。
彼いわく、スパイダーマンの特にダメなところは胸のマークだそう。
これをみているクモ恐怖症の方のために図解はしませんが、クモの模様がたしかに書いてあります。
会議中、恐怖を示すマークが常に隣にあったら、会議どころではないでしょう。
僕は彼が言っていることをすぐに理解しました。
しかしながら、彼が言っていることを理解できない人が多いのです。
なぜ理解できたのか?
実は僕自身が「風船恐怖症」です。恐怖症の感覚は理解できます。
ぼくも風船恐怖症を克服するために、改善のためいろいろ試したことがありますが、まったく効果がありません。
自分自身、風船恐怖症を克服するのは一生無理だと思っています。
彼もいろいろ挫折をしながら、その恐怖症と生きてきたそうです。
無駄なアドバイス
恐怖症を持っていない方は、口々にこうすればいいとか、ああすればいいといいます。しかしながら、ほとんど見当違いです。
よくあるのが、
- そばに置いておけば慣れるよ
そばにある(いる)だけで、身じろぎするくらいなのに、ただ単に恐怖で硬直するだけ - 接してみなよ
接したくありません - 関係ないと思ってみなよ。
それができれば苦労はないんです。でも、恐怖だと思っているものを関係なく思えません。そんなことを言っている人とは「あなたと関係がない」と思っています。
「そのうち恐怖症も消え去るさ」「恐怖症なんて忘れるさ」とも言われます。
昔、花粉症は治らない病と言われていましたが、治療法によっては花粉症が収まっている方もいらっしゃいます。そこには治療法が確立しており、医学的にも認められた治療法となっています。
恐怖症に対しても、正しい「治療方法」があれば、それこそトライします。
恐怖症から逃げているのではなく、「逃げざるを得ない状況」となっているのです。
おそらく、多くの方は恐怖症というものを持っていないと思います。あったとしても「お化けが嫌い」「飛行機が嫌い」と嫌う程度でしょう。
ここで大きく認識が違うのは「恐怖」と「嫌悪」の差だと思います。
お化け恐怖症も飛行機恐怖症も存在します。
恐怖とは
恐怖(きょうふ)、または恐れ(おそれ)(英: fear)とは、動物や人間のもつ感情の一つで、こわいと思うことやその気持ち。
引用:Wikipedia ~恐怖~
嫌悪とは
嫌悪(けんお)とは、憎み嫌うこと。
引用:Wikipedia ~嫌悪~
大きく違うのは、僕の場合、風船を憎んではいません。ただ単に怖いだけなのです。むしろ憎いのは、恐怖症をおもしろがって、わざと風船を仕向けてくる人です。
仕掛けてくる当人はおもしろいのかもしれませんが、仕掛けられる方は恐怖でしかありません。
最後に
恐怖症は、根性論や慣れの問題では解決しないのです。
今回このような文章を書いたのは、年末に「虫が大嫌い」なジャニーズの方が「虫をさわる」という企画をやっていました。とても気の毒で見てられませんでした。
仕事とはいえ、かわいそうの一言でした。
日常社会で「スパイダーマンを隠してください」と言えた彼はまだ勇気がある方です。
たいていの方は、脂汗をかき、その場が立ち去る、もしくは収まるのを身をこわばらせて、じっとするだけです。
恐怖症を持つ人達は、「恐怖症持ち」であることは本人たちも自覚してます。
恐怖症の申し出があったら、優しく見守り、以降その件には触れないでください。
できれば、その恐怖の環境と接することがない配慮をお願いします。
「風船恐怖症」の僕から、ささやかなお願いです。